はじめてのカフェに一人で入る「オトナ」の正体
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知らない土地で、ちいさなカフェを見つける。
たたずまいお洒落で、きっとおいしいケーキセットでもあるのだろう。
…と思いながら、店内を様子見してするーっと通り過ぎる。
あ、通り過ぎちゃった。
立ち止まって、回れ右。
今度はゆっくり、歩幅小さくカフェに近づく。
このとき、店の外にメニュー看板が立っていると非常にありがたい。
入りたい気持ちしかないが、立ち止まって逡巡するフリができる。
その間にチラと店内を再びのぞく。
意を決して扉に手をかけ、取り付けられているベルがチリンチリンと鳴った。店の人が奥からやってきて、「1名さまですか」という。
わたしは控えめに人差し指を立てて、一人であることを示す。
席に通され、メニューが渡された。
思ったとおり、おいしそうなケーキセットがあり、しばし悩む。
サンドイッチにも目移りしたがケーキセットにしぼり4つのケーキからどれにしようか悩んでいると、
混雑する時間なのか、わたしの悩みタイムがあまりにも長かったのか、呼んでいないけど店員さんがやってきた。
とまどいを隠しながら
「チョコレートケーキで」
と伝えた。
ふう、と一息つく。
それほど広くない店内を眺め、音楽、照明、開業当初と思われる写真、その雰囲気をじっくりと味わい、ほくそ笑んだ。
こわくない、こわくない。
ひとりで知らないカフェに入ると、いつもこんなだ。
知らないカフェにするりと入っていけるのがオトナと思っていた中学生のわたし。
オトナの真っ只中というのにこのありさまだが、無事店内にすべりこみ注文を終えると、まるで自分が秘密機関のスパイにでもなったかのような気分になる。
きょろきょろと店内を見回し、様子をうかがい心の中で「ミッション・コンプリーッ」とつぶやく。
落ち着くことはできないが、わくわくとそわそわで別の楽しさがある。
しばらくすると、セットで注文した紅茶が運ばれ、店員さんがポットから一杯分注いでくれた。
アールグレイに少しのレモンの香りがする。
すうっと鼻で香りを吸って「んはーっ」と吐き出す。少量、口に含むと、体内の臓器が徐々にあたたまるのがわかった。
ケーキも運ばれ、食べるごとに増えればいいのにと思いながらフォークでつつく。
大満足なのは言わずもがな。
二杯目の紅茶を注ぎ、ガラスのポットが空になったのを、店員さんが目ざとく発見し、カウンターに消えゆく前に、すっと下げていった。
もしこの「ミッション」に報告書なるものが存在していたら、「店員のすばやさ最上級」とでも書いておくだろう。
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