舞台 「命売ります」 ポップな三島よこんにちは
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三島由紀夫の小説「命売ります」の舞台化。
初読で感じた、わくわく。
三島由紀夫の作風のふり幅に、比喩に心躍ったのを覚えている。
今年(2019)の1月にドラマ化もされている。
衣装の雰囲気も合わさり登場人物がキャラクター化され
とても舞台らしい、三島由紀夫の作品だと忘れてしまうくらい
コミカルでカラフルな「三島入門」にはうってつけな作品となっていた。
実際、原作も漫画のようなライトな雰囲気となっている。
簡単なあらすじとして、
主人公・山田羽仁男はコピーライターとしてしっかりと稼げており、
それで満足していた。しかし、ある日突然死にたくなった。
(ここの比喩描写がたまらない)
というもの。
以下、ネタバレを含む可能性があるので観劇予定のある方は
自己責任で……
【全体の印象】
全体の雰囲気として、明るいコメディ色強い楽しいものとなっていた。
けれど表の表現には出てこないが、一人ひとりどこか悲しさ漂うやるせなさ…
そんな印象も抱いた。
展開が前後していることはあるが、セリフなども比較的原作通りで
それを舞台上で表現していることに面白みを感じた。
【キャストについて】
羽仁男の最初の依頼者、ナゾの老人は私の中でドラマの田中 泯さんの風貌・たたずまいがしっくりきていたが、
原作を読み返してみると、今回演じられていた温水洋一さんの老人のほうがより原作の描写に近いということがわかり、演出家の視点や伝えたいものの違いなのかと一人、納得。
今回気になったキャストさんは、ナゾの老人の若い妻役をやっていた莉奈さん。
莉奈さん演じるルリ子は、とてもチャーミングだった!
相手が口を開く前にまくしたて、パワーと勢いがありいきいきとしたルリ子がそこにいた。
原作を読んでいた時は、もっと気だるいイメージをもっていたが、
そこはやはり、舞台だ。気だるげなルリ子は今回の舞台にはふさわしくないだろう。(吸血鬼の息子、薫もしかり)
さらに声が良かった。かわいらしさと色っぽさが合わさった声で
ずっと聞いていたい声質。
ふるまいはディズニーキャラクターのようにいい意味でオーバーで、
よりルリ子という人物が際立っていたように思う。
【気になったシーン・こと】
●物語も終盤となり、死にたかった羽仁男はあれよあれよという間に流され
結婚をし家庭を築いてしまい、ふと自分が死にたくなった瞬間を回想する。
そのシーンのスピード感!原作通りの描写を羽仁男の口からとめどなく流れ
その一連の動作、勢いは「唐版 滝の白糸」のアリダを彷彿とさせた。
とてもかっこよく、かつ劇場全体の空気が不安定になる瞬間だった。
●まじめにせりふとして「ふふふ」といれているのは新鮮だった。
含み笑いを交えた「ふふふ」ではなく、言葉としてくっきり発音する「ふふふ」
である。
そういった仕掛けがよりその人物をわかりやすく、立体的にしているのかな
と思ったり。
【舞台装置について】
舞台装置も面白く、高さのある巨大な箱馬のようなものを孤島から孤島へ乗りうつるように
役者が移動していく。さらに階段があり、扉が並ぶ二階へとつながる。
要は底上げされている状態だ。様々な扉が一階にも整然とならび、
シーンごとにその効果を発揮する。それはまるで登場人物たちそれぞれの人生の扉だった。
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この作品をはじめて読んだとき、
絶対舞台化してほしい…!と思った。
私の脳内では勝手に妄想舞台化され上演されていた。
今回の舞台を観て、もっとスピード感と原作を読んだ時の滑稽さが
表現されていてもよかったかなぁと。
どうしようもない、やるせない残念さがあるといいなと思った。
ラストの警官とのやりとりでブラックアウトもありなのかな、と妄想したり。
でもそういった尻切れトンボのような演出は小劇場でこそ似合うものなのかもしれない。
池袋サンシャインで、さらに大阪へも巡業するというプロジェクトでは
やはり丸く収まったな、という落としどころが必要だったのかもしれない。
演出脚本のノゾエ征爾さんもパンフレットの中の本谷有希子さんとの対談でこうおっしゃっていた。
「…小劇場では到底出せない、プロデュース公演でしか得られないような
整理されたエネルギーというのもあるし。
それをどう受け取ってこちらのエネルギーとぶつけるかを考えるのが、最近は楽しくなってきた。」
色々な事情の上成り立っている舞台、自分とは異なる解釈がなされた本作を
観劇できてただただ楽しかった。
三島っておもしろいんだよ!ということをわたしも発信したい。
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