デザイラストレーターの演劇もろもろレポ

本のこと、物語のことを考えているフリーランス/デザイラストレーター。 高等学校教諭免許(国語)保持 主に読んだ本のことや舞台観劇レポ。 ◆Twitter @mei_le20

舞台 「グッド・バイ」 ファッション太宰

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太宰治の「グッド・バイ」

原作を読みはっとした。

伊坂幸太郎さんの「バイバイ、ブラックバード」だ、と思った。

そういえばオマージュだという情報を何かで読んだ。

 

そして、wowwowで放送されていた連続ドラマ

「バイバイ、ブラックバード」で城田優さん演じた大女「繭美」は

キヌ子だろう。

 

その粗野でおおざっぱで豪快なキヌ子をゆうひさんが演じられるなんて…!

それはうれしさやワクワクのおどろき。

 

どの人物も衣装がとても舞台らしく、その人物を記号化する役割を担っているように

みえた。

キヌ子の光沢ある真っ赤なドレスは、まさに「美」の象徴。

あっけらかんで雑な言動だが、恐ろしく似合っている真っ赤なドレスと真っ赤な傘は

有無を言わせぬ説得力があった。

 

 全体

「グッド・バイ」を下敷きにしながら

本名 津島修治と作家 太宰治 の葛藤、その周辺の女性、

そのほかの作品を織り交ぜ、太宰という人物を解釈していくような舞台だった。

 

 

劇的で映像的なかっこいい演出が多く、雨音が川の水が揺らぐ音など

水の音が印象的だった。

 

…んが、ゆうひさんファンとしては

「生まれてすいません」というセリフはつら、かった、、かな。

あくまで役、なんだけど

 

 

そして太宰のこれまでの女性たちが集い酒を酌み交わすシーンは

なんだかホラーっぽく、太宰イコール暗いという

イメージの助長にならないかなぁとぼんやり思ったり。

でもギャグの一種なのかも、と思い直してみたり。

 

 

中高生のころは太宰を読んでいた。

おもしろおかしく読んだ。

私にとって太宰はまじめに面白いことを言ってのける人だと思っている。

真剣に生きているのがなんかおかしい、みたいな。

 

 

チェーホフの「かもめ」の登場人物たちや「男はつらいよ」の寅さんみたいに、

一生懸命生きていて本人は大真面目だけど、

はたから見ればちょっとおかしくて、ずれてるんだよなぁ、みたいなそんな人。

 

 

 

 

 

パンフレットの中で脚本演出の山崎彬さんが、

10代のころに太宰を読み、あっという間に通り過ぎたといっている。

「どこかファッションのような感覚」と。

 

まさに。

大学で「人間失格」を読み解いたとき、教授も言った。

「人間失格を読みわたしの研究室を訪ねた学生が言った。これは自分だ、と」

しかしそれは「一種のファッション」なのだ、と。

 

 

わたしもご多分に漏れず、太宰を通ってきた。

けれどしばらくご無沙汰だった。久々に彼の作品(特に後期)を読み、

やっぱりおもしろいなぁ…!とかんじた。

 

ひとつまえに三島由紀夫の「金閣寺」を読んでいたので、

その文章の軽妙さや素直さに驚き、太宰治のひとりごとを延々聞かされているような

感覚になった。

 

 

いや、三島の飾る美しい文章もすきなのだ。

彼の作品には美男美女が登場するし、その描写がすき。

 

 

作中の文章を切り取ると、それはたちまち彼のほんとうの言葉のように感じる。

登場人物のセリフ、ではなく、太宰治のことば、のような。

まさに「ラブレター」なのかもしれない。

 

たまには太宰を着飾ってみてもいいかもしれない、

そんなふうに思えた。